佐藤茂のときどき真面目な金融日記

とある外資系トレーダーが綴る、金融中心かと思いきや雑多なブログ

セル・イン・メイ(Sell in May)を検証してみた。日本株のシーズナリティを見てみよう。

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こんにちわ。佐藤です。

年を取るにつれて、月日の経過がますます早く感じられます。今年も早くも5月が終わりました。そこで今回は、相場に関する有名な格言のひとつ、「Sell in May and go away」について検証してみたいと思います。要は株は5月以降下がるから、その前に売って、下がったところで買いましょうという大雑把なものです。

ちなみに、今年の5月は、TOPIXが-1.8%、日経が-1.2%、S&Pは+2.2%でした。

もともとこの格言は、「Sell in May and go away, come back on St. Leger's Day」というフレーズから来ており、イギリスの貴族や商人が、暑い夏の前に商売を切り上げて秋以降に戻って来る習慣を表したものです。St. Leger's Dayというのは、競馬好きの方ならご存知かも知れませんが、イギリスのクラシック3冠目のセントレジャー・ステークスの日を指します。だいたい9月の半ばですね。

それでは早速、その格言が本当かどうか、検証してみましょう。他のブログでも似たような記事はあるので、ちょっと違う要素を追加してみました。

 

目次

 

TOPIXの月別平均リターン

まず、TOPIXの月別平均リターンを見てみましょう。データは、1980年1月から2018年5月までの月次データを使っています。売買は月末最終日に行うとします。例えば、5月のリターンは、4月最終値から5月最終値までのリターンです。

以下が月別の平均リターンです。

 

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こうして見ると、5月はほぼフラットのようです。バーチャートにするとこうなります。

 

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だいたい、チャートの真ん中で凹んで、両端でプラスになっているのが分かると思います。つまり、初夏から秋にかけて売られて、それ以降で盛り返すと。

最初の値を1として、各月のリターンを累積していった場合の図がこれです。

 

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 「Sell in May」(4月末売り)がベストかは分かりませんが、たしかに初夏から秋にかけて下げる前に売って、10月末くらいに買い戻すというのは正しそうです。つまり、格言の言っていることは一理あると裏付けられたわけです。

 

年代別のパターン

つぎに、1980年から直近までをごちゃまぜにしてみるのではなく、時代別に見てみましょう。こういうのは非常に大事で、トレードや相場の分析をする際にも、余力のある限り、細かい切り口で見てみることをお勧めします。

「年代」と言ってもいろいろな分け方があって、単純に5年ごととか10年ごととかでも良いのですが、今回は、以下の3つに分けてみました。

1.1980年から1989年(バブル崩壊前まで)

2.1990年から2007年(バブル崩壊から金融危機前まで)

3.2008年から直近(金融危機以降)

ついでに、他のマーケット(米国、欧州、新興国)も追加してみました。

アメリカはS&P500指数(SPX)、欧州はEurostoxx50指数(SX5E)新興国はMSCIエマージングマーケット指数(MXEF)を使っています。 

1980年から1989年(バブル崩壊前まで)

まずはバブルが崩壊する前までのチャートです。

 

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SX5EとMXEFはデータが少なかったため、TOPIXとSPXのみの表示となります。この年代は、日米ともずっと上げている印象ですが、確かに5月以降、10月末まではその他の時期に比べて上げの度合いが少ない感じ。

1990年から2007年(バブル崩壊から金融危機前まで)

次に、バブル崩壊から金融危機前の2007年までです。

 

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これを見ると、バブル崩壊後の日本株の負けっぷりが一目瞭然ですね。やはり、各マーケット5月以降に停滞しているのが見て取れます。この年代では、日本株だけ冬から春先にかけて取り返すということができていないですが、他のマーケットではしっかり上げてますね。

2008年から2018年(金融危機から直近まで)

最後に、2008年以降です。

 

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これも、やや形状がちがうものの、5月以降停滞し、秋から盛り返すという感じになっています。この年代のパフォーマンスでは、日本が欧州と新興国を上回っています。新興国は、出だしの2008年に1/3程度になるまでやられまくったこと、欧州は2011年以降おなじみの欧州危機がたびたび顔を出すこと、日本株はアベノミクスで回復したことが理由です。

 

シーズナリティの理由

以上を見ると、夏前に売って冬前に買い戻すというのは正しそうですね。実はこれ、よく知られた現象で、ほとんどのマーケットに共通したシーズナリティです。ところが、その原因についてはあまり説得力のあるものに出会ったことはありません。

日英は会計年度が3月締めなので5月発表の決算期まで強気だとか。

夏はみんな夏休みに行って買い圧力がなくなるとか。

年末にボーナスもらった連中が1月に株を買うとか。

その他いろいろ。

まあ、それらを全部足し合わせると、上のようなシーズナリティに帰結するのかもしれませんが。

まとめ

「Sell in May and go away」という格言は一理ある。

実はマーケットではよく知られた現象で、大雑把にいって、4、5月くらいに売って、10、11月くらいに買うと良さそう。

それでは最後に金融機関のdisclaimerっぽいことを言って締めたいと思います(笑)

「当記事は情報共有のためだけに作成されております。過去の実績は将来のパフォーマンスを保証するものではありませんのであしからず。」