佐藤茂のときどき真面目な金融日記

とある外資系トレーダーが綴る、金融中心かと思いきや雑多なブログ

デリバティブの基礎の基礎(3)無リスク金利

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前回は、金利には「単利表示」と「複利表示」があることを見ました。そして、ファイナンスの世界ではしばしば「連続複利」で金利を考えると便利であることを説明しました。

今回は、デリバティブの世界でよく使われる「無リスク金利」について説明します。英語ではリスクフリー・レート(Risk Free Rate)といいます。実は、デリバティブの計算をするさいに「金利」と言った場合、それはよく「無リスク金利」のことを指します。

極論すると、現実世界に無リスクなものはないのですが、ここでいう無リスク金利とは、実質的にリスクがほぼ無視できるような資産を運用した場合に得られるリターンのことを言います。例えば国債の利回りなどがよく挙げられます。他にも、のちに出てくるLIBORやスワップレートが使われたりもします。

今、ある無リスク資産Aが存在するとしましょう。そしてそれを運用することで年間10%のリターンを得ることができるとします。すると、『デリバティブの基礎(1)フォワードと裁定取引 で出てきた「裁定機会が存在しない」という仮定を用いると、ありとあらゆるその他の無リスク資産も年間10%のリターンを稼ぐことになります。

たとえば、ある無リスク資産B が年間9%のリターンしか実現しないとします。その場合、資産B を100 万円分ショートして、得たお金で資産Aを100万円分購入するとどうでしょう。1 年後に110 万円の価値をもった資産Aを売却して、109万円の価値をもった資産Bのショートポジションを手仕舞いすることで、無一文から1年後に1万円の利益を手にすることができます。

逆に、資産B が年間11%のリターンを実現するとすれば、資産Aを通して年利10%でお金を借りて資産Bに投資することで1万円の利益を生み出せてしまいます。ともに無リスクなのだったら、金利の安い方で借りて、高い方を運用して利益を上げようとするのは当然です。

しかし、このような裁定取引の機会が存在しないと仮定すると、無リスク資産BのリターンはAと同じく10%でなくてはなりません。つまり、「裁定機会が存在しない」と仮定すると、ありとあらゆる無リスク資産はあるひとつの「無リスクリターン」を実現することになるわけです。

注意してほしいのは、もしも資産Bが無リスクでない場合は話しが違ってくるということです。通常、リスクの高い資産は、リスクを負っている分、高いリターンを生み出すことが期待されます。ここで述べたのはあくまでも、「裁定機会が存在しないと仮定すると、ありとあらゆる無リスク資産は無リスク金利を実現する」ということです。

それでは次回は、『デリバティブの基礎の基礎』シリーズのひとつの目標である「将来のキャッシュフローを現在価値にディスカウントする」ということの意味を見ていきましょう。

 

 

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