佐藤茂のときどき真面目な金融日記

とある外資系トレーダーが綴る、金融中心かと思いきや雑多なブログ

スワップの基礎(7)CDS(Credit Default Swap)

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前回までに、スワップとは何か、どんな種類があるのかについて簡単に見てきました。今回は、CDSについて説明します。

CDSはクレジット・デフォルト・スワップ(Credit Default Swap)の略で、言うなれば「特定の企業がデフォルトする確率」を取引するものです。これまでこのシリーズで解説してきたスワップとは若干毛色が異なります。

 

 

CDS

今、ある投資家が企業Aの社債を購入したとします。投資家からすれば、A社がデフォルトすると元本が返ってこない恐れがありますから、A社のデフォルトに備えた保険がほしいと考えるでしょう。この場合、投資家はA社を対象とするCDSを購入することでこのリスクを取り除くことができます。

古典的なCDSは以下のような図になります。

 

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例えば、投資家がA社を対象とする元本100億円のCDSを買ったとします。CDSの価格は「スプレッド」で表します。例えば、スプレッドが1%だと、CDSの買い手は元本の1%を毎年売り手に支払います。支払い頻度が3か月の場合、

 100億円 \times 1\% \times 1/4 = 1/4 億円

を3か月おきに支払うことになります。CDSの期間は通常5年ですが、1年のものもあれば10年のものもあります。A社に何も問題がなければ、買い手はそのままスプレッドを満期まで支払い続けて終わりです。

ところが、もしもA社に「何らかの問題」が発生した場合、CDSの買い手はA社債を元本価格で売りつけることができます。この「何らかの問題」をクレジットイベントと呼び、CDS締結時に規定しておきます。

例えば、上図のように締結から11か月目にクレジットイベントが発生した場合、最後の支払いから2か月たっていますから、その2か月分のスプレッドを最後に支払って社債を元本で売りつけることになります。

クレジットイベント

例えば、典型的なクレジットイベントは以下のようなものです。

 

●クーポンおよび元本の支払い不履行

●債務再編

●破産

 

債務再編とは、企業や政府が返済困難に陥った時に、既存の債券に対する支払期限の延長や元本およびクーポンの引き下げなどを行うことです。

CDSは企業を対象としたものに限らず、政府を対象とするものやCDO(債務担保証券)を対象とするものまであります。

 

現物決済と差金決済

上の図では、クレジットイベント発生時にCDSの買い手が売り手に債券を元本価格で売りつけていますが、これを現物決済といいます。現物を売り渡すわけです。それとは別に、差金決済がとられる場合もあります。

CDSは、対象となる債券を保有していなくても買うことができます。例えば上の図の例でいうと、この投資家はA社債を保有していますから、クレジットイベント発生時にはその保有しているA社債を元本価格で売りつければよいわけです。

ところが、CDSは投機目的で買うことができます。つまり、「この会社つぶれそうだな」とか「この国デフォルトするな」と思えば、対象となる債券を保有せずともCDSだけ買うことができます。

その場合、クレジットイベントが発生しても売りつける債券がありません。こうしたケースを想定して、差金決済という制度がとられます。

差金決済では、額面価格と市場価格の差額がCDSの買い手に支払われることになります。例えば、A社にクレジットイベントが発生したとします。すると直後にオークションが行われ、債券の決済価格が決められます。仮に、額面100円のA社債の価値が激減して、オークションの結果最終価格が20円に決まったとしましょう。その場合、元本100億円分のCDSの買い手は80億円を受け取ることができます。

実質的には、100億円でA社債を全部売り払うことと同じ効果になります。

 

今回はここまでです。次回は、 CDS指数について説明します。

 

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