スワップの基礎(6)為替スワップ(Foreign Exchange Swap)
スポンサーリンク
今回はスワップの基礎シリーズ第6弾ということで、為替スワップについて説明します。第4回で、為替ヘッジの手段としてベーシススワップについて解説しました。
為替スワップも、ベーシス・スワップと同様に、為替変動リスクをヘッジした上での外貨調達に用いられる手段です。共通点もあれば相違点もありますので、それを解説したいと思います。
為替スワップ
為替スワップも、クロスカレンシー・ベーシス・スワップと同じように、為替変動リスクをヘッジした上での外貨調達を目的とします。
為替スワップのキャッシュフローは以下のようになります。現時点の為替レート(スポット為替レート)で、ある通貨と別の通貨の元本を交換し、それと同時にフォワード為替レートで将来に反対の為替取引を行うことを約束しておきます。下の例では、期間1年、スポット為替レートは1ドル100円としています。
クロスカレンシー・ベーシス・スワップと違い、期中に金利のやり取りは行いません。また、実際には為替スワップは3か月程度の短期のものが多く、ほとんどが1年未満です。一方でクロスカレンシー・ベーシス・スワップは1年以上のものが多く取引されます。
金利平価説(Interest Rate Parity)
フォワード為替レートは、金利平価説をベースに決まります。要は、将来の為替レートは、現在の為替レートに、2通貨間の金利差を加味して決まるという考えです。
スポット為替レートが1ドル100円で、米ドルの金利が5%、日本円の金利が1%だったとします。すると、1年後には1ドルは1.05ドルになるでしょうし、100円は102円になるでしょう。これらは同じ価値であるべきなので、1年後の為替レートは、
1.05ドル=102円
つまり、
が1年後の為替レート、つまりフォワード為替レートだというものです。一般に、現在のスポット為替レートを、自国通貨の金利を、外国通貨の金利をとすると、 年後の為替レートは
となります。この考えを、特にカバー付き金利平価説(Covered Interest Rate Parity)と言います。
クロスカレンシー・ベーシス・スワップは期中に金利の交換をしますが、為替スワップの場合、言ってみれば期中の金利交換をしない代わりに金利差を満期時点での為替レートに織り込んでいるわけです。
クロスカレンシー・ベーシス・スワップとの比較
それでは、今説明したCovered Interest Rate Parityだけで為替スワップおよびフォワード為替レートが決まるかというとそうでもありません。市場参加者が将来の金利に対してどう見ているか、またクロスカレンシー・ベーシス・スワップと同様にファンディング需要が大きな影響を及ぼします。
前回、クロスカレンシー・ベーシス・スワップを説明した際に、米ドルでない側にベーシスを付加して契約すると言いました。例えば、ドル需要が高まると、このベーシスはマイナスの値をとります。
同様にドル需要が高まると、上図におけるフォワード為替レートは は、Covered Interest Rate Parityに基づく値よりも、より円高になって(つまりの値は小さくなって)取引されます。
クロスカレンシー・ベーシス・スワップも為替スワップも、為替変動リスクをヘッジした上での外貨調達の手段として用いられます。したがって、同じ期間を比較した場合、一方での外貨調達が他方よりも明確に割安だった場合、皆がそちらの手段を優先するようになって、割安感はなくなるでしょう。つまり、クロスカレンシー・ベーシス・スプレッドと、為替スワップを通したフォワード為替レートには裁定が働くことになります。
今回は以上です、次回はこれまでと若干毛色を変えてCDS(Credit Default Swap)について説明します。