佐藤茂のときどき真面目な金融日記

とある外資系トレーダーが綴る、金融中心かと思いきや雑多なブログ

イールドカーブと景気サイクル。逆イールド発生は不景気突入の証!?

スポンサーリンク

巷では、いよいよアメリカのイールドカーブが逆イールドに!と話題になっています。そこで今回はイールドカーブの形状変化と景気サイクルについて見ていきましょう。

イールドカーブって何だよという方はまずこちらを。

www.shigeru-sato.com

 

 

イールドカーブと景気サイクル

一般に、イールドカーブは景気サイクルとともに以下の4つの形状変化をとるとされています。

どこから始めてもよいのですが、不景気から開始するとしましょう。下図でいうと左上から時計回りです。

f:id:shigeru_sato:20181206124034p:plain

イールドカーブの形状変化と景気サイクル
  1. ブル・スティープ(Bull Steepening)

    不景気になると、経済活動を刺激するために、貸し借りが容易に行われるよう中央銀行が短期金利を下げる。金利が下がり、債券利回りが低くなるとマネーが徐々に株式に回るようになる。金利全体が下がる、つまり債券価格は上昇するという債券ブル相場であり、短期金利の下落が長期金利のそれよりも大きく、カーブの傾きが急になるので、ブル・スティープニングと呼ばれる。

  2. ベア・スティープ(Bear Steepening)
    緩和刺激策の効果が出ると、景気の拡大を示唆して、将来の金利正常化およびインフレが織り込まれて長期金利が上がる。長期金利の上昇(債券ベア)が主導となってカーブの傾きが急になるので、ベア・スティープニングと呼ばれる。

  3. ベア・フラット(Bear Flat)

    景気拡大期後半になると、バブル相場を防ぐように中央銀行が短期金利の引き上げに入る。短期金利の上昇(債券ベア)が主導となってカーブの傾きが平坦になるので、ベア・フラットニングと呼ばれる。

  4. ブル・フラット(Bull Flat)

    短期金利の上昇がコストとなって徐々に企業業績にのしかかってくると、将来的な政策金利の引き下げが意識されるようになる。長期金利の下落(債券ブル)が主導となってカーブの傾きが平坦になるので、ブル・フラットニングと呼ばれる。そして実際にレセッションに入ると1に戻り、政策金利が引き下げられる。

 

イールドカーブ変化の覚え方

ここで、私が開発した、上記イールドカーブ変化の必殺の覚え方を紹介しましょう。それは、「不景気になるとブスになる」です(笑)

上述のように、不景気になると中央銀行は政策金利を引き下げるため、短期金利の下落(債券ブル)が主導となってカーブがスティープニングするブル・スティープニングが発生します。

ブル・スティープニング、略して「ブス」です。実際、不景気になると世の中の人々の顔が暗くなってブスになると覚えましょう。

あとのサイクルは流れで覚えてください(適当笑)

基本的に、スティープニングというのは、金融緩和策が取られている状態、フラットニングというのは引き締めに舵を取っている状態です。

 

過去の米景気

必ずしもこういったイールドカーブの形状変化が景気サイクルとともにきれいに現れるわけではなく、各局面で行ったり来たりすることもあるのですが、歴史的に見ると、だいたい8~10年程度でこの景気サイクルを繰り返します。

 

1983-1990の米景気

直近でみると、米景気は1980年代に拡大していきましたが、80年代の後半にFEDが利上げサイクルに入ると、徐々に企業債務が意識されだし、1990年のオイル危機をきっかけにレセッションに入りました。

 

1991-2001の米景気

レセッションに入るとFEDは政策金利の引き下げで対応します。すると1990年代は再び景気拡大期に突入します。しかし今度はドットコムバブルの崩壊によって不景気に入ることになります。

 

2002-2008の米景気

FEDは再び政策金利を引き下げて、ドットコムバブル以降再び景気は拡大期に入ります。しかし今度はサブプライム問題に端を発する大規模な金融危機に陥ると2007年末より一気に不景気に突入します。

 

2009-現在

金融危機に対応するため、FEDは一気にほぼ0%にまで政策金利を引き下げます。その他、国債をはじめとする金融資産の爆買いなど大規模な金融緩和策を実行することで、米景気は現在まで再び拡大してきました。

 

実際、上に述べたように政策金利もあわせて変化させていることが分かります。

f:id:shigeru_sato:20181206153049p:plain

アメリカ政策金利の推移『出典:Bloomberg』

 

逆イールドは景気後退のシグナル!?

さて、2018年12月現在の米国債イールドカーブは上記サイクルにおける3(ベア・フラットニング)から4(ブル・フラットニング)に移行したような動きをしています。

FEDは米景気が好調でインフレ基調にあることから、徐々に短期金利の引き締め(利上げ)をこなしてきていました。

ところが市場には利上げペースが速すぎるとの懸念が早くからまん延しており、アマゾンを始めとする各社企業の業績悪化を背景とする10月の株の暴落が起こると、その後のパウエルのハト派コメントもあり、イールドカーブが大幅にブル・フラットニングする事態となりました。

f:id:shigeru_sato:20181206160249p:plain

イールドカーブのブル・フラットニング

 

ご覧の通り、3年5年でみると短期金利が長期金利を上回る逆イールドという事態が発生しています。まだ2年10年では逆イールドとはなっていませんが、ここ1か月で急激にフラットニングしたのは間違いありません。歴史的に見て、逆イールドは不景気突入の極めて優秀なシグナルとなっています。はたして、このままブル・フラットニングが続くのか、あるいは今回のフラットニングがリスクオフによる一時的な長期債の駆け込み買いによるものなのか。筆者は、このまま一気に不景気突入とは行かないと思いますが、そろそろ景気サイクルの終わりに近づいているのは間違いなさそうです。