スワップの基礎(2)金利スワップの想定元本表示
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前回、金利スワップとはどういうものかについて解説しました。
今回は金利スワップの想定元本表示について見てみましょう。
まず、その前に「想定」元本という言葉の意味を説明します。前回説明したように、金利スワップとは、期中の金利部分だけを交換する契約なのですが、実際に満期時に想定元本を取引したと考えても構いません。すると下の図のようなキャッシュフローになります。
満期に元本を交換したところで、同額のキャッシュが相殺されるので、根本的に影響はありません。同じ額のキャッシュを交換することに意味はないので、現実にそんなことはしないだけです。
ただこうして考えるとうれしいことがあります。B銀行にとっては、これはクーポンS%、満期3年、半年ごとに受取りの固定利付債をロングし、満期3年、半年ごとに6か月LIBORを支払う変動利付債をショートしていることにほかなりません。つまり、スワップレートを考える際に、
(固定利付債の価格)=(変動利付債の価格)
となるようにスワップレートが決まると考えてもよいわけです。固定利付債と変動利付債の価格についてはすでに『債券の基礎』で解説した通りです。固定利付債の価格は、将来のキャッシュフローをその資産のディスカウントレートで現在価値に直して足せばよいわけです。上の例の場合
(固定利付債の価格)
となります。スワップをbondと考えた場合の固定側のディスカウントレートは、LIBORを使わなければなりません。なぜなら、スワップレートはあくまでもLIBORと交換するものであって、通常のbondのように、取引を締結する相手企業・銀行の信用をもとに発行されるものではないからです。スワップは、LIBORと同じく、それを構成する国際銀行の信用リスクを取引していると考えてもよいでしょう。
この上の式が変動利付債の価格と等しいわけですが、ここで「変動利付債の価格は額面と等しい」という事実が威力を発揮します。つまり、
となるわけです。
ところが、ここでひとつ問題があります。LIBORはありとあらゆる契約・デリバティブに顔を出してくる超重要な金利なのですが、12か月以内の短期までしか存在しません。つまり、上の式での18mL以降は直接観測できません。
それではどうするかというと、『債券の基礎』のブートストラップ法のところで説明したように、すでに市場に出回っているスワップレートをもとに長期LIBORを逆算するということをします。スワップは国債市場と同じく非常に巨大なマーケットで、常時スワップレートの買値と売値が市場で提示されています。
スワップの固定側に想定元本を加えてbondとして見ると、それは価格が変動利付債と同じ、つまり額面と同じですからこれはパー債です。つまり、スワップレートとは、最終利回りがクーポンと等しいパーイールドに他なりません。
『債券の基礎』で、価格と最終利回りとゼロレートの関係を見ましたが、スワップの固定側をbondとして見た場合、価格は常に100のパー、最終利回りがスワップレートS(これはクーポンに一致)、そしてゼロレートがLIBORに相当します。
さて『債券の基礎』で、市場に出回っているゼロクーポン債と固定利付債からブートストラップ法を用いてゼロを求めることができると言いました。
スワップでもまったく同様です。既知のLIBORと市場で取引されているスワップレートから、逐次的に12か月以上の長期LIBORを求めていきます。そして同様に、イールドカーブを引いて補間することで、任意の期間のLIBORを推定するわけです。
最終利回りに相当するスワップレートをプロットしたものをスワップカーブ、LIBORをプロットしたものをLIBORカーブ、あるいはスワップゼロカーブと言ったりします。繰り返しになりますが、LIBORとスワップは同じ信用リスクであり、最終利回りに相当するものがスワップレート、ゼロレートに相当するものがLIBORあるいはスワップゼロレートです。例えば、そのイールドカーブは下のようになったりします。(『債券の基礎』で使ったものと同じ図ですが笑)
次回は、OISとテナーベーシススワップについて解説します。