佐藤茂のときどき真面目な金融日記

とある外資系トレーダーが綴る、金融中心かと思いきや雑多なブログ

保険会社と銀行はオープン外債投資増加へ。円高リスクは覚悟の上。ヘッジコスト(金利差+ベーシス)が高すぎる!

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今日は、国内の保険会社や銀行がオープン外債投資を増やしているというお話を。

 

 

外債投資の背景

オープン外債というのは、為替ヘッジをしない外債投資のことを言います。

ご存知の通り、日本の国債(円債)の利回りは鼻くそみたいなもんで、短期債に至っては利回りがマイナスのため、買う妙味がありません。

そこで日本の保険会社や銀行は、高利回りを求めてアメリカの国債や社債などへの投資を増やしてきていました。

2008年の金融危機以降、欧米は金融緩和のお金ジャブジャブ戦法で乗り切ってきたわけですが、その中で真っ先に経済が復調し、唯一金利正常化に舵を取っているのがアメリカです。米10年債利回りは3%超ですから、日本の機関投資家にとっては非常に魅力的です。

高利回りを求める動きはイールドハンティング(Yield Hunting)と言われ、米債以外にも、例えば新興国の国債などははるかに利回りが高いわけですが、リスクが非常に高いため、保険会社や銀行などのように、コンサバな運用を求められるところではなかなか行けません。

先進国で米債より利回りが高いのはイタリア債くらいですが、イタリアはイタリアでポピュリズム政党が台頭しており、政治的な不確定要素が非常に高く、新興国並みとまでは言いませんが、利回りが高いのには訳があります。

そうなってくると、好調な経済(当ブログで何でも言ってますが、来年以降そろそろ怪しいですが)に支えられての健全な高利回りという意味ではアメリカが数少ない選択のひとつなわけです。

 

外国資産に投資するには為替ヘッジをしておこう

ところが、日本の投資家が米国の資産に投資をする場合、為替リスクが伴います。当然、米債を買うにはまず日本円をドルに変えて購入するわけですが、米債の価値がドルベースで1%上昇したとしても、為替が1%円高に振れれば、円ベースではプラスマイナスゼロということになります。

そこで通常、ドル資産に投資をする際には、同時に為替ヘッジをかけて投資を行います。為替ヘッジは、為替スワップの形で行うのが通常です。つまり、スポットレートで円売りドル買いを行い、同時にフォワードレートで3か月後にドル売り円買いの予約を入れておくというやり方です。

www.shigeru-sato.com

 

その際、3か月先フォワードレートがスポットレートよりも円高であれば、それはヘッジにコストがかかるという意味です。為替のヘッジコストというのは

(ヘッジコスト)=(金利差)+(ベーシス)

で決まります。そしてそのヘッジコストはフォワード価格に反映されています。詳しくは以下記事をご参照ください。

www.shigeru-sato.com

 

ただし、ヘッジコストが高すぎる!

ところが今、そのヘッジコストが上昇しており、実は為替ヘッジをかけて米債投資をするのって、何も考えず円債投資をするよりもイケてない状況になっています。下図の通り、いまや両方鼻くそみたいなもんです。

 

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ドルに対する需要と円に対する需要とのバランスで決まるベーシスコスト自体はそれほど高くなっているわけではないのですが、要は単純にアメリカの政策金利が上昇していることを受けて、ドルと日本円の間で短期の調達金利差が拡大しているのが最大の理由です。

そこで保険会社などは、もう為替ヘッジ外しちゃえ!という方針になっているのです。それがオープン外債増加です。

 

円高リスクは覚悟の上!

例えば米10年債を買えば2018年11月現在、ドルベースで3%程度の利回りを取れるわけです。ところが、為替ヘッジをしていないので、為替が3%円高にふれればリターンは帳消しになってしまいます。それどころか、5%円高に振れれば一気に含み損です。

これだけ金利差が拡大しているので、為替も円高にはふれにくいだろいうというのが保険会社や銀行各社の思惑なようですが、個人的にはもうそろそろドル高局面もいったん終わりだろと思っています。

はてさて。