ヘッジファンドの偉人たち(4)サブプライムローンでぼろ儲けしたジョン・ポールソンの直近のポジション開示。最近は勝てていないけど。。。
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こんにちわ。佐藤です。
「ヘッジファンドの偉人たち」シリーズの第4回目はジョン・ポールソンです。この人です。
『出典:WSJ』
直近のポールソンの持っているポジションが相変わらずいかにも古典的なイベントドリブンのファンドっぽかったのでご紹介したいと思います(笑)
イベントドリブン戦略というのは、企業の合併・吸収や、スピンオフ、その他特殊なアクションに乗じてポジションを取り、お金を稼ぐ手法のことです。
サブプライムローンでぼろ儲け
ジョン・ポールソンは、1955年にニューヨークで生まれました。ファンドマネジャーに多いユダヤ系の血を母親からひいています。
珍しいことに、彼は最初のキャリアをコンサルティングファームのBoston Consulting Groupでスタートしています。そこでアナリストとして企業の分析、助言に従事した後ウォールストリートへと転身し、39歳のときにPaulson and Co.を創業します。
なんと言っても彼を一躍有名にしたのは、2008年のサブプライムローン問題です。サブプライムローンを組み込んだCDOのCDSを大量に仕込んでぼろ儲けしたのです。
「いや、ちょっと何言ってるか分かんない」という方、ごもっともです(笑)。
こちらをご一読ください。手前味噌ですが、サブプライムローン問題について、その辺の解説よりも分かりやすいかと思います。
13Fルール
さて、今回ポールソンを話題にしたのは、上述の通り、相変わらず彼の取っているポジションがいかにもイベントドリブンのファンドらしいからなのですが、なぜ彼のポジションを知れるのかというと、13Fルールがあるからです。
運用額が100万ドル以上の機関投資家は、四半期末ごとに、持っている米株のロングポジションを45日以内にSEC(Securities and Exchange Commission)に開示しないといけません。
この際、提出する書類が"Form 13F"と呼ばれることから、俗に13Fルールなどと言われています。今の時期は、2018年9月末時点での各ファンドのポジションを知ることができます。
相変わらずコテコテのポジション取り
直近のポジションを見ると、Bausch Healthや、Shireに大きなポジションを取っているようです。
Bausch Health(旧Valeant)
Bausch Healthというのは、今年の7月に改名した社名で、以前はバリアント(Valeant)という名前でした。Valeantにピンと来た方はなかなかの通だと思います(笑)
この製薬会社は、数年前まで、M&Aをひたすらアグレッシブに繰り返して株価は上昇の一途をたどっていました。
『出典:Bloomberg』
しかし2015年8月、調子にのって心臓の薬の価格を釣り上げたことが当時の大統領候補でもあったバーニー・サンダース(Bernie Sanders)に議会で指摘されてから暴落の一途をたどります。
その2か月後には、空売りのプロ、アンドルー・レフト(Andrew Left)から不正会計を指摘されたことが暴落に拍車をかけました。
当時、Pershing Square Capital Managementのビル・アックマン(Bill Ackman)はValeantの大株主で、Valeantの株価防衛のためにカンファレンスまで開くのですが、それにも関わらず株価の暴落は続き、結局アックマンは大損をこいてしまいます。
2017年、アックマンはついにValeantの株式を売り払い、代わりに今が買い時と筆頭株主に躍り出たのがポールソンでした。
2018年11月現在、ポールソンはBausch社の6%の株を保持する筆頭株主となっています。
Shire
Shireも製薬会社ですが、これはご存知の方が多いと思います。最近、武田薬品と日本企業による過去最高の額(約7兆円)での買収に合意しました。
合意と言っても「完了」ではなく、まだ破綻に終わる可能性がないわけではありません。
実はShireは過去にも買収のターゲットになっており、もっとも有名なのが米製薬大手Abbvieによる買収です。Abbvieは、アイルランドに本拠地を構えるShireを買収することで税率を下げるようとしていたのですが、米政府が節税目的での海外企業買収を規制する方針を示し、結局破綻に終わっています。
NXP
その他、ここで紹介したNXPもまだ保有しています。
最近イケてないポールソン
実は、2008年に一躍名をはせたポールソンも、それ以降はまったくイケてません。2011年のピーク時には380億ドルもの資金を運用していたのですが、現在は90億ドルにまで縮小しています。そしてそのほとんどはポールソン自身のお金であり、顧客は大量に資金を引き揚げたことが分かっています。
今年の3月にはパートナーレベルの従業員を何人も解雇しており、人員削減にもせまられています。
デビッド・アインホーンやビル・アックマンのように、ワンマンで成功してきた人間が一度リズムを崩すと調子を取り戻せないように、ポールソンも苦しんでいます。