佐藤茂のときどき真面目な金融日記

とある外資系トレーダーが綴る、金融中心かと思いきや雑多なブログ

ヘッジファンドの偉人たち(3)世界最大のヘッジファンド、ブリッジウォーターの創始者レイ・ダリオが語る今後の相場!

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こんにちわ。佐藤です。

久しぶりに「ヘッジファンドの偉人たち」シリーズを。

世界最大のヘッジファンド、ブリッジウォーター

昨日、レイ・ダリオ(Ray Dalio)から、いよいよ米資産は長期的な低リターンの時代に突入するとの薄気味悪い発言がありました。

この人です。

 

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『出典:CNBC』

 

頭の切れそうなおじいちゃんですね。実際すさまじく切れるわけですが笑。

まあコメント自体はさほど目新しいものではなくて、「長く続いた金融緩和の影響であらゆるリスク資産が高どまりしている状況の中、金融政策が正常化に向かえば自然と期待リターンは圧縮される」的なことです。

ただし、歴史に造詣の深いダリオらしく、「各国でポピュリズムが台頭している今の状況は1930年に似ており、また各国がバラバラになりつつある欧州が一番苦労するだろう」という興味深い発言もしています。

 

このレイ・ダリオは世界最大のヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエイツ(Bridge Water Associates)の創始者として大成功を収めたひとです。運用総額は約20兆円!とまさに桁外れです。

彼は、子供のころから株式投資を始め、25歳の時に自室にてブリッジウォーターを創業します。

ブリッジウォーターの2つの戦略

Pure Alpha

ブリッジウォーターは、2つの大きなファンド、”Pure Alpha"と"All Weather"を運用しているのですが、”Pure Alpha”はグローバルマクロの戦略となっています。大雑把に言うと、世界経済の兆候を読んで、株や債券、コモディティや為替などに投資してリターンを狙う戦略です。株と言っても、個別株の財務諸表を細かく分析するというより、より大局的な観点から日本が欧州に比べて買われやすいと思えば、日経を買って、Eurostoxxを売るというようなスタイルです。”Pure Alpha”は、歴史上もっとも大きな金額を稼ぎ出しているファンドとしても有名です。

All weather

そして、もうひとつブリッジウォーターが有名なのが’”リスクパリティ(Risk Parity)”のパイオニアとしてです。リスクパリティに基づいて運用されているのがもう一方のファンド"All weather"です。リスクパリティというのは、いろいろなリスク資産に投資をする際には、そのリスクが均等になるように投資するという主義のことです。例えば、資産Aのボラティリティが10%、資産Bのボラティリティが5%であれば、資産Aの方が資産Bよりも倍リスクが高いと言えますから、運用額が30億であれば、資産Aに10億、資産Bに10億配分する。という具合です。そして、その配分を定期的に見直してリバランスしながら運用していくのです。

現在、このリスクパリティに基づいて運用されているマネーが大量に増えすぎて、市場を脆弱にしているとの批判があります。

例えば、米株が暴落したとします。すると米株のボラティリティが増えますから、リスクパリティの運用者は、米株への資金配分を減らさなくてはなりません。つまり、さらに米株に売り圧力がかかるわけです。こうしたフローが市場のファンダメンタルズを歪め、一昔前までは通用していたのに最近全然ダメダメなファンドマネジャーは山のようにいます。ちなみに、”All weather”とは文字通り全天候型を意味しますが、このファンド結構負けてます(笑)。

レイ・ダリオの現在

ダリオは、2017年4月に、ブリッジウォーターのCEO(Chief Executive Officer)の座から身を引いています。といっても、CIO(Chief Investment Officer)にはとどまっています。若干ややこしいのですが、ヘッジファンド会社には会社経営者としてのCEOと、投資責任者としてのCIOが存在します。その他、リスク責任者(Chief Risk Officer)やオペレーション責任者のCOO(Chief Operations Officer)、コンプライアンス統括者のCCO(Chief Compliance Officer)などが置かれる場合もあります。

この中で一番偉いのは、CEOではなくCIOです。ほとんどの場合、CIOの方が株を多く持っていますし、給料も多いです。ファンド設立時から役職が分かれている場合、どちらかというとCEOは、CIOが「俺ファンド始めたいんだけど、お前会社運営手伝ってくれない?」という感じで雇われている場合が多いです。小さなヘッジファンド会社の場合は、CIOがCEOなどを色々兼任する場合が多いですが。

ダリオ曰く「死ぬまで、あるいは会社が自分を不要と判断するまで投資に関わり続ける」そうです。

彼は、上述のように歴史にも造詣が深く、また最近は瞑想にもはまっているそうで、その方面での活動も活発に行っているようです。楽しそうで何よりです(笑)