佐藤茂のときどき真面目な金融日記

とある外資系トレーダーが綴る、金融中心かと思いきや雑多なブログ

ヘッジファンドの偉人たち(2)デビッド・アインホーンのグリーンライト・キャピタルが相変わらずの絶不調。業績回復なるか?

スポンサーリンク

こんにちわ。佐藤です。

デビッド・アインホーン(David Einhorn)のグリーンライト・キャピタル(Green Light Capital)が相変わらずの不調で、6月のパフォーマンスが-7%、上半期が終了した時点で2018年は-19%だそうです。この人です。

 

f:id:shigeru_sato:20180630223101p:plain『出典:CNBC』

 

半年で-19%というのは、ヘッジファンドとしてそもそもかなりダメなのですが、株式ロング・ショートという戦略においてはとりわけイケてません。

そこで今回はアインホーンについて紹介したいと思います。

ヘッジファンドの偉人には、ユダヤ系が多くいます。

・ソロスファンドのジョージ・ソロス(George Soros)

・ルネサンス・テクノロジーズのジム・シモンズ(Jim Simons)

・ポイント72のスティーブ・コーエン(Steve Cohen)

・ミレニアムのイスラエル・イングランダー(Israel Englander)

・ポールソンのジョン・ポールソン(John Paulson)

 

などなど。アインホーンもユダヤ系です。今年で50歳なんですが、上の写真の通り今でも若々しくて、童顔で有名です。それこそ彼が若くして名声を得てメディアに出てきたときなんかは、声も顔も少年のようでした。

 

若かりし頃のアインホーン

f:id:shigeru_sato:20180701013421p:plain『出典:CNBC』

 

うーん、若い(笑)。

彼は、ヘッジファンドで働いたあと1996年に90万ドルの資金を元手にグリーンライト・キャピタルを設立します。半分は両親から借りたお金です。彼の手法はロング・ショートと呼ばれる戦略で、企業のファンダメンタル分析を駆使して、割安な企業をロングして割高な企業をショートして利益を上げるものです。ヘッジファンド業界でもっとも多いタイプで、手法としては非常に古典的なものです。

彼は父親がベンチャーキャピタルを経営しており、その父の血を受け継いで若いころから企業分析の才能があったのでしょう。順調に好パフォーマンスを積み上げていきます。

特に彼は「ショートの名手」として有名です。

2002年、彼は中小企業向け融資をビジネスとする企業アライド・キャピタル(Allied Capital)が、保有する流動性の低い証券およびローンの評価を意図的に釣り上げて会計処理しているとして、彼自身アライド株をショートしていることを公言します。

これに怒ったアライドは、反対にアインホーンの行為が株価の不正操作に当たると主張、アインホーン自身がSEC(米証券取引委員会)の操作対象になってしまいます。この両者のやり合いは長期間に及び、世間の大注目を浴びることになります。そしてアインホーンの発表から5年後の2007年、SECはアライドに不正があったことを認め、アインホーンの勝利という形で決着を見るのです。

結局アライドはその後、保有企業の倒産を受けて株価が大暴落。他者に買収されることとなります。

また、彼の名声を決定的にしたのは2008年のリーマン・ブラザーズのショートです。彼は、リーマン・ブラザーズがCDO(債務担保証券)の損失計上を正しく行っておらず、投資家に対するディスクロージャが不十分であると主張し、自身がリーマン・ブラザーズ株を大量に空売りしていると公言します。

そして当時リーマン・ブラザーズのCFOであったエリン・キャレン(Erin Callan)との電話会談を、回答が不十分であると批判し株価を下落に追い込むのです。

 

ちなみに、このリーマン・ブラザーズの空売りがあったものの、2008年にグリーンライトは-23%という、設立以来の大負けを喫しています(笑)。

当時リーマン・ブラザーズにいた私の友人の何人かは、野村に移籍あるいは職を変えることになるわけですが、皆アインホーンが大嫌いです(笑)。別に、リーマンがつぶれたのはアインホーンのせいではないですが。

いずれにせよ、彼はうさん臭い企業を徹底的に分析して、いかさまを明るみにして空売りを仕掛けるというのを非常に得意にしています。彼自身、いかさま企業を探し出して駆逐することは、国、市場、経済に資する社会的に意味のある行為だと公言しています。

そんなグリーンライトですが、ここ数年は絶不調で、特に2014年末から直近(2018年6月末)までのパフォーマンスは-28%と、普通のヘッジファンドなら既に潰れているレベルです。投資家も資金を引き上げており、ここ2年で約30億ドルもの流出に見舞われています、

直近の最大のポジションはGM株のロングですが、6月に入って大幅下落、反対にショートしているTeslaが上昇と苦しんでいます。

彼の不調の原因は、彼の古典的な分析スタイルが時代に合わなくなってきていると見られています。これに関しては、アインホーンのみならず例えばPershing Squareのビル・アックマンにも当てはまるのですが、ワンマンで成功してきたファンドの場合、血の入れ替えを行わずにスター創業者が一昔前と同じ感覚でワンマン運用していると、こういった窮地に陥りやすいように思います。

果たして、アインホーンかここからかつての隆盛を取り戻すことができるのか見ものですね。