佐藤茂のときどき真面目な金融日記

とある外資系トレーダーが綴る、金融中心かと思いきや雑多なブログ

米中貿易戦争の本気度は?今とるべき戦略とは。

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さて、今回は相場の話をしようと思います。

株、為替、債券、コモディティ全部ひっくるめると、今の相場を動かしている一番の要因は貿易戦争への思惑です。株と為替も、「貿易戦争」が意識されると円が買われたり株が下げてと忙しいですね。

つい先日は、独自動車ダイムラーが大企業として初めて貿易戦争を理由とした減益見通しを発表しました。

こっちの業界でも、ここに来て貿易戦争の深刻さに対する見方が広がっています。

実は、当初貿易戦争がヘッドラインに上がった時点では、そう深刻な事態にはならないだろうという意見が大半でした。

その最大の理由は、年後半に中間選挙があるからです。トランプとしては、支持基盤である製造業・農業復活のために努力しているとアピールすることは大事です。貿易戦争なんのその、という強気の態度を見せることには意味があるわけですが、そもそもそれが行き過ぎて株価にマイナスの影響を及ぼしては元も子もありません。

これまでも何度も、「俺が大統領になってから株価はずっと上がっている」と言い張ってきたわけで、彼にとって株価というのが自分の存在を正当化する材料になっているのは間違いありません。(正直、株価があがっているのは別に彼の功績じゃないんですが。)

そのため、ある程度欧州・中国をビビらせて点数稼ぎをしたら終わるだろうとみるのが多数派でした。

ところが、アメリカは現時点で経済自体は好調で*1、2月以降は株価も堅調ですし、今すぐ引く必要がないのも事実です。

そのため中国からの報復措置を受けても強気の発言を繰り返すというチキン・レースの様相を呈してきているわけですが、そろそろ「おいおい大丈夫か?」という雰囲気が最近になって出始めているのも事実です。

で、今後ですが、やはりこれ以上エスカレートすると自国の株価に明確に影響が出てくるのは避けられないでしょう。

また、中国が報復措置として発表した課税対象にトランプの支援業界である農作物や石炭が含まれており、こうした業界からもあまりやり過ぎないでくれよという声が出始めています。実際、中国は大豆の国内消費の約1/3をアメリカから輸入しており、約25%の関税をかけることで大豆先物価格は16%の大暴落となっています。

トランプとしては当然こうした声は無視できないわけで、そろそろ政権内部からトーンダウンないし本格的に交渉をはじめるべきという雰囲気が出てくるだろうとにらんでいます。

貿易戦争に関しては、面子を重んじる中国から頭を下げることは絶対ない一方で、むしろ言い出しっぺのトランプの方がトーンダウンしやすいとみています。なぜなら、トランプだからです(笑)。そもそもめちゃくちゃな奴が、急に弱気になって若干主張を変えたところで、周りはなんとも思わないでしょう。

ロシアスキャンダルしかり、北朝鮮問題しかり、いままで何度も見てきたことです。ポルノ女優と問題起こそうが大して支持率に影響ないわけですから。もしもオバマがミシェル夫人に内緒でポルノ女優と浮気して口止め料渡してたのが発覚したら、それこそ支持率一桁いくでしょうけど。

またもう1つ、交渉が本格化した際、わりとアメリカに有利な内容で解決が図られる可能性が高いと見ています。というのも、現在の中国にとっての最大の関心事は、経済ではなく軍事・外交だからです。彼らにとっては、朝鮮半島および東南シナ海の掌握がトップ・プライオリティですから、貿易戦争でアメリカに花をもたせてやる代わりに、軍事・外交では譲歩しろと迫る可能性が非常に高いでしょう。

以上を踏まえて短期的には、「貿易戦争に関する悪材料」で売られるような局面では、クロス円の下値をひろうスタンスで短期売買したいと思います。

ただし、中国については経済指標も軟化してきていて、米金利上昇もあり新興国には全般的にきびしい状況になってくるでしょう。目線、中国株に対してはかなりのベアです。おそらく、近いうちに貿易戦争の話題から、中国のファンダメンタルに注目が集まってくるのではないかと思います。アメリカ株が軟化するのはもう少し後だとみています。

また、数か月以内にドルが売られ始める局面がくると見ているので、それまでは機敏に対処したいところですね。

*1:そろそろlate cycleなので、かげりが見えてくるだろうと思いますが、おそらく来年以降の話でしょう。