佐藤茂のときどき真面目な金融日記

とある外資系トレーダーが綴る、金融中心かと思いきや雑多なブログ

オプションの売りは危険!?いやいや、賢くやれば大丈夫です。破綻してyoutubeで謝罪したヘッジファンドOptionsellers.com

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こんにちわ。佐藤です。

先日、天然ガスがボラティリティのショートとベアスプレッドのショートポジションをスクイーズして急騰したことをお伝えしました。
これを受けて破綻に追いやられて、投資家に謝罪の動画をyoutubeに上げたヘッジファンドマネジャーがいます。フロリダに居を構えるOptionsellers.comです。末尾に「.com」なんか付いていて、なかなかヘッジファンドらしくないですが、それ以前に名前自体がいけてません。Optionsellersって(笑)
 
彼らは、その名の通り、nakedでオプションを売るのを主に行っていました。nakedとは裸、つまりヘッジも何もなくオプションの売りをかまして、原資産が大きく動けばぼろ負けし、その代わり大きな動きがなければ勝つという単純な戦略ですね。
 
幣著『実務家のためのオプション取引入門』でも簡単に説明してありますが、オプションはリスクヘッジのツールとして使え、世の中の人はリスク回避的(Risk Averse)であることから、オプションのプレミアムは本来あるべき価格よりもやや高めに取引されるのが通常です(リスクプレミアム)。
 
したがって、オプションの売りは勝率の高い戦略ではありますが、今回のようなバイオレントな値動きが起きれば、一気に大損害を受けるわけです。天然ガスの実現ボラティリティは、下のように急騰していますから、nakedでオプションをショートしていてはひとたまりもありません。白のラインは過去10日間だけの値動きから年率換算したボラティリティ、オレンジのラインは過去30日間からと、複数のラインはルックバック期間の違いに対応しているだけで、特に気にする必要はありません。
 

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『出典:Bloomberg』

 

ちなみに、Optionsellers.comのマネジャーであるJames Cordierは、「The Complete Guide to Options Selling」なる本まで書いてオプションの売りを勧めていました。別に、オプションの売りを中心とした戦略にはまったく不自然なことはありません、ただし、リスクヘッジがすさまじく重要なことは言うまでもありません。で、Jamesは見事に失敗したわけです。
 
一応投資家に対して申し訳ないという気持ちはあるようで、なんとyoutubeにわざわざ謝罪の動画をアップロードしています。こんなマネジャー見たことありません。ご興味のある方は見て頂くと良いかと思います。290人の投資家がいたようで、さすがに全員の名前を挙げることはしていませんが、主だった投資家の名前を挙げて、過去の思いでを語っております。途中で泣きそうになったりと、かなり哀愁を帯びた切ない中身となっております。
 
私はnakedでオプションの売りをかますような真似はしませんが、今回の件に限らず、ヘッジファンドの破綻、倒産の報を聞くたびに、身が引き締まる思いになります。ではでは。