佐藤茂のときどき真面目な金融日記

とある外資系トレーダーが綴る、金融中心かと思いきや雑多なブログ

ヘッジファンドの偉人たち(6)優秀なトレーダーの集合体、ミレニアム・マネジメントの創業者イスラエル・イングランダー。

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こんにちわ。佐藤です。

前回、2018年10月にワールドクオントの話をしましたが、ワールドクオントの話をしたからにはミレニアム・マネジメント(Millennium Management)の話をしないわけにはいかないということで、今回はミレニアムとその創業者イスラエル・イングランダー(Israel Englander)についてです。

イスラエルの名前の通り、彼はユダヤ系です。日本語では「イスラエル」と言いますが、英語では「イズレアル」に近い発音で、愛称はイジー(Izzy)です。私は会ったことがないので、そう呼んだこともないですが(笑)

この人です。

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『出典:New York Post』

 

こじゃれた眼鏡やのう(笑)

彼は、1970年にニューヨーク大学を卒業すると、ウォールストリートでトレーダーとして働き始めます。転換社債やオプションのトレードを主に行っていたのですが、当時は今と違って、こうしたプロダクトで裁定取引の機会が山のようにあったので、バシバシ稼ぎました。

そして彼は稼いだ金の一部を注入し、また顧客からもお金を集めてミレニアムマネジメントを創業します。当時は3500万ドルからのスタートでした。開始当初は、転換社債やStatistical Arbitrageなどのトレードが主力だったのですが、運用額が増大するにつれて、いつしか世界中の優秀なトレーダーを雇って彼らに多くの自由度とインセンティブを与えて取引されるマルチマネジャーのプラットフォームへと変容します。

この世界でミレニアムを知らない人間はおらず、ミレニアムに応募して自分の裁量で運用をしたいという独立心の強いトレーダーは多くいます。

最初に与えられる額は様々ですが、いきなり数百億円の運用機会を任せられることはザラです。そして、だいたい稼いだ額の15%を報酬として受け取ることができます。トレードのために必要なオペレーションなどのバックオフィスサポートなどはミレニアムが面倒を見てくれますし、お金集めのために顧客回りに奔走することもなく、自分はトレードだけに集中できて15%の報酬というのは、かなり多いほうです。

しかし、ミレニアムはその厳しいリスク管理で知られており、トレーダーによって異なるのですが、例えば月間で3%程度マイナスになった時点で強制的にポジション縮小、10%になったら即退場など、トレーダー自身にかなりの規律が求められるスタイルとなっています。

2018年10月にはミレニアム全体で約1%の損失を出しましたが、これは極めてまれなことで、逆に言えば、それほど先月のマーケットが難しかったことの非常に説得力のある証左とも言えます。

イングランダー自体はすでに第一線から身を引いているのですが、ミレニアムは、現在でも多くの腕に覚えのあるトレーダーが志す場所であり続けています。