佐藤茂のときどき真面目な金融日記

とある外資系トレーダーが綴る、金融中心かと思いきや雑多なブログ

債権の基礎(4)FRAとユーロダラー先物

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前回は、フォワードレートという概念を説明しました。要は、将来のある時点からある時点までの金利のことです。今回は、その将来の金利を取引するFRAとユーロダラー先物について解説します。FRAは「フラ」と呼んだりします。

 

 

FRA

今、ある企業Aは、現時点で資金の借り入れの必要はないのですが、3か月後に100億円が必要で、半年後には返済の目途が立っているとしましょう。A社にとっては、3か月後に借り入れ金利が上昇しているのは大きなリスクです。そこで、3ヶ月後スタートで期間3ヶ月のFRA  F_{\rm{3\times6}}を取引することで、そのような金利上昇リスクをヘッジすることができます。

今、A社がそのようなFRAを2.5%で支払う取引をしたとします。この時、慣習としてA社はFRAを「買った」ことになります。あるいは、FRAを2.5%でペイ(pay)したと言います。A社とFRAを交わしたB銀行は、FRAを「売った」ことになり、2.5%でレシーブ(receive)していると言います。

さて、3か月後に3か月LIBORが2.8%に上昇していたとしましょう。FRAはLIBORで決済します。つまり、2.5%で支払うと約束したものが2.8%で決済することになるので、A社はFRAから0.3%分の利益が出せて、金利上昇リスクをヘッジできたことになります。元本が100億円の場合は、

 100億円 \times (2.8\%-2.5\%) \times 0.25 = 0.075 億円

ですから、750万円分をヘッジできたことになります。実際には、FRAは契約開始時である3か月後に決済することになります。750万円とは、契約開始時(3か月目)から契約終了時(6か月目)までにかけて生じる差額ですから、契約終了時点での750万円を契約開始時に直すためには、契約開始時点でのLIBOR(この場合2.8%)でディスカウントしなければなりません。したがって実際には、3か月目に

 \frac{750万円}{(1+2.8\% \times 0.25)}=745 万円

だけもらえることになります。反対に、3か月後にLIBORが下がった場合はA社は損失を被ってしまいます。まあ、リスクヘッジとはそういうものなので仕方ありません。
 

ユーロダラー先物


FRAと同様に将来の金利を取引するプロダクトとして、ユーロダラー先物(Eurodollar Futures)があります。ユーロダラーというのは、もともと欧州の金融機関が保有するドル資金のことを指していたのですが、現在は米国本土以外のドル資金のことを表す言葉となっています。そのユーロダラーを銀行間で貸し借りする際につく金利のことをユーロダラー金利と言うのですが、基本的に米ドルLIBORと同じと思ってもらって差し支えないです。

 

ユーロダラー先物は、将来のある時点での、ドル3か月LIBORを決済価格とする先物(Futures)であり、取引内容を自由に決められる二者間の取引であるFRAとは違い、CME(Chicago Merchantile Exchange)という証券取引所に上場されています。

またFRAとは違い、IMM方式と言われる一風変わった方式で取引されます。つまり

 100-\left(3か月\rm{LIBOR} \right)

の値で取引が行われます。例えば、2018年9月限のユーロダラー先物は2018年9月17日時点の3か月LIBORの値で決済します。現在、ユーロダラー先物が97.5で取引されているとすれば、それは市場参加者が2018年9月17日時点での3か月LIBORが2.5%になると思っているということです。

例えば、その日に金利がもっと上がっているだろうと思えば、ユーロダラー先物を「売る」ことで、その意思に則したポジションを取ることができます。ユーロダラー先物は、$1,000,000を想定元本としているため、例えば9月17日の3か月LIBORが2.75%であれば、実際には

 $1,000,000 \times (97.5-97.25)/100 \times 0.25 = $625

勝つことになります。

 

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 上の図は、直近の9月限ユーロダラー先物の推移を表しています。これを見ると2018年現在下落基調にありますが、これは米金利が「上昇基調」にあることを意味しています。

ユーロダラー先物は、FRBの利上げのペースの思惑をめぐって投機筋が取引する対象となっています。とあるヘッジファンドが、FRBの利上げペースが市場参加者が思っているよりも早いと思えば、ユールダラー先物をショートするでしょうし、なかなか利上げできないと見れば、ロングして利益を上げようとします。

 

今回はここまでです。次回はデュレーションについて解説します。

 

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